研究概要 |
(森研究代表者チーム)電荷秩序分子性物質θ-(BEDT-TTF)_2RbZn(SCN)_4において、電場誘起準安定状態を見出し、電荷フラストレーションによる本質的不均一状態から数日にわたる緩和過程を持つことを見出した。プロトン-電子相関系電荷移動錯体(Py-TTF)_2(H^+)(F_4TCNQ)_2を作成し、プロトン誘起の電荷秩序状態であることを明らかにした。 (山田分担者チーム)シス-ジメチル基を有するmeso-DMDH-TTPのTaF_6塩は4.2Kまで金属的性質を示すのに対し、トランスージメチル基を有するキラルな(S,S)-DMDH-TTPおよびラセミ体の(±)-DMDH-TTPからは半金属的な伝導挙動を示すTaF_6塩が得られることを明らかにした。さらに、α-[(S,S)-DMDH-TTP]_2AuI_2は、c軸方向に一軸圧(0.5GPa)をかけると完全に温度依存性のない電気抵抗(ゼロギャップ伝導)を示すことを見出した。 (西川分担者チーム)常磁性金属イオンへの配位部位としてシッフ塩基配位子を導入したTTF-配位子の合成法を確立し、4座および6座配位のTTF-配位子を合成し、TTF部位が酸化された錯体の合成に成功し、それらの物性を明らかにした。また、ピラゾール基を導入したTTF-配位子を合成し、極低温で単分子磁石として振る舞う多核金属錯体の合成も行った。また、縮小π電子系ドナーであるDODHTのBr塩を新たに合成しその物性を解明した。 (黒木分担者チーム)第一原理バンド計算を用いて(BDH-TTP)_2AuI_2,[(S,S)-DMDH-TTP]_2AuI_2,および圧力誘起超伝導体(BDA-TTP)_2MCl_4(M=Fe,Ga)の常圧下におけるバンド構造を計算し,比較した。さらに第一原理計算で得たバンドを基にオン・サイトの相互作用のみを考慮した有効模型を考え、乱雑位相近似により磁性と超伝導の競合関係を調べた。また、昨年度までに熱電効果の説明で成功をおさめたτ-型有機導体に対する有効模型を平均場近似により解析し、磁性の起源を調べた。
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