可逆3分子反応を記述するr-GSモデル(U+2V⇔3V : CREST (2002〜2007)で開発)を、本領域の研究目的に見合うように整備をすすめた。従来の非平衡系のシミュレーションでは、系の環境(外界)は変化しないという条件を課すのが一般的であったが、本研究は階層形成を主題とするところから、「系が存在することによる環境への影響」と、「環境を介した系自身へのフィードバック」が議論できる階層モデルの構築を先行させた。あわせて、パターン形成を非平衡熱力学的視点から定量的に議論するために、エシトロピー流およびシステム全体のエントロピー変化という熱力学的指標を新たに導入した。R-GSモデルに現れる、自己増殖系とチュ-リング構造形成系のパターン形成の2つについて、エントロピー生成を加えた3つの熱力学的指標の変化を計算した。自己増殖系では、パターンの発展とともに系のエントロピー生成は増加し、システム全体のエントロピーも増加した。これに対しチューリング構造形成系では、これらの熱力学的指標は全く逆の振る舞いを示した。これらのことから、系内のエントロピーを環境に捨てる場合でも、環境から系内にエントロピーが流入する場合でも、系内でパターン形成が起こる条件があることが示唆される。(2)外部摂動下におけるコロイド分散系の配列形成に関する実験については、測定・観測等の実験装置の整備を行った。(3)領域内連携に関しては、研究代表者訪問や班会議等を通じて役割の明確化を図るとともに、公募研究の準備を行った。
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