研究概要 |
(1) 昨年度の成果を踏まえ、系と外部環境の相互作用の解析を行った。系の働きかけにより外部環境が揺らぎ、固定境界条件下では得られない特異なパターンが形成する条件があることが数理モデルを用いた研究によって示された。また、系と外部環境という階層間の相互作用をエントロピーの収支バランス(熱力学的視点)から定量的に議論するために、平衡状態にある物質ではなく非平衡条件下にある系の状態によって定義される新しい化学ポテンシャルの概念を導入した。 (2) 分子系の創発現象の例として、フラーレンC_<60>,C_<70>,C_<76>溶液を基板上で蒸発乾固させたときのパターン形成(脱ぬれ現象)に関する検討を開始した。フラーレン微結晶が形成する大域的な脱ぬれパターンとフラーレンの分子構造・脱ぬれ速度・基板表面構造等の諸因子との関係について基礎的な知見を得た。フラーレン微結晶のラセン状配列という興味深い現象も観測された。より大きな構造要素が関与する創発現象の例として、交流電場下におかれた球状および板状シリカコロイドのインピーダンス分散及び連珠配列形成に関する検討を行った。板状シリカコロイドの界面分極現象は球状シリカの場合よりも増強されることが示された。さらに、生体反応系の動的階層機能の化学モデルとして、ベローソフ・ジャボチンスキー反応パターンに対する共存ミセルの摂動効果についても検討を加えた。 (3) 階層形成におけるゆらぎの建設的な役割を明らかにするために、材料科学におけるコヒーレンス・レゾナンスの研究者との連携を開始した。
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