研究領域 | 分子ナノシステムの創発化学 |
研究課題/領域番号 |
20111003
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
甲斐 昌一 九州大学, 工学研究院, 教授 (20112295)
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研究分担者 |
日高 芳樹 九州大学, 工学研究院, 助教 (70274511)
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キーワード | 自己組織化 / 創発ノイズ / 階層性 / 確率共鳴 / ナノ構造 / VLSプロセス / クーロンブロッケイド / 分子動力学法 |
研究概要 |
(1)VLSプロセスによるナノ構造形成と(2)クーロンブロッケイド系での電流電圧特性という二つのテーマに関して、メカニズム解明のための理論研究を行った。 (1)基板上におかれた金属触媒液滴により結晶成長を促進することで、ナノワイヤ上の単結晶構造を形成するVapor-liquid-solid(VLS)法は実験的に広く用いられており、これまで主に計算機シミュレーションを用いてその普遍的メカニズムの解明に取り組んできた。これにより液滴による結晶促進効果の本質が液-固界面での界面張力低減による臨界核形成率の著しい増加に起因することを突き止め、正常な形状のナノワイヤ成長を効率化するための材料供給圧の最適値が存在することを明らかにした。本年度はさらに結晶成長材料の種類に対する成長特性の依存性・温度等の制御条件への最適成長条件の変化等についても数値計算に基き系統的理解を試み、さらにそこで得られた設計指針に従って共同研究グループ(阪大)では、複数の新奇酸化物材料を用いたVLSナノワイヤ形成を実現した。 (2)有機系微細回路へのバイアス電圧印加によりクーロンブロッケイドが起こりその非線形電流電圧特性に関する研究が進められている。クーロンブロッケイドに伴う閾値電圧分布が非線形電流電圧特性に重要な役割を果たすことから、我々は一次元回路において閾値分布を解析的に導出した。原理的には任意の回路長について厳密解を導出できるが、現実的には計算の煩雑性により長い回路についての導出には困難が伴う。そこで近似的な離散分布に対象を限定して導出を試みた。求めたい離散分布は一列に並んだ異なる高さを持つ物体の隣同士の高さの関係を示す分布と等価であり、時間とともに広がるポテンシャル中の拡散を表すフォッカープランク方程式に従うことを示した。得られた離散分布はシミュレーション結果を完全に再現しており、閾値分布を通した非線形電流電圧特性の解明に向けて大きく前進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ構造形成に関しては、基礎的形成原理の解明は終わり、さらに材料物性の多様性も含めたより普遍的な形成原理を解明しつつある。クーロンブロッケイドに関しては、モデルの構築を行い閾値特性などを明らかにしている。また、外部雑音の効果を行うための予備的シミュレーションに着手している。このように研究目的に対して順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは抽象モデルに対する基礎研究を主に行ってきたが、今後は実験グループが同新学術領域内にいることを活かしてより具体的な対象についての研究も行い、これまでに得られた基礎知見を外生雑音の機能的役割へとつなげられるように融合研究を進めていく。
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