研究概要 |
生物を構成する分子ナノシステムは、ゆらぎを積極的に利用して情報処理を行うようプログラム(自己組織化)されている。その仕組みを取り入れて、研究代表者の専門である半導体集積回路工学から得られた知見をもとに、新規分子ナノデバイス(A04班)を計算要素とする情報処理アーキテクチャを構築することが本研究の目的である。分子ナノシステムにおける情報処理に必要な要素は、1)演算方式,2)情報伝送,3)計算要素間の通信,4)インターフェース,の四つである。これら全ての要素は、雑音を排除するのではなく積極的に利用して機能するため、雑音に鋭敏な分子ナノデバイスに最適であると考える。これまで、熱雑音/環境雑音に鋭敏な半導体デバイス(単電子ナノデバイスおよび微細CMOSデバイス)にてその動作を実証してきた。本年度は、上記のアーキテクチャをA04班の新規分子ナノデバイスに適用することで、ナノ情報処理システムのための生体模倣情報処理の具現化可能性について検討を行い、i)ReRAM構造用いたシナプス可塑性を持つニューラルネットワークアーキテクチャ,およびii)単分子デバイスによる確率共鳴素子の非線形特性の仕組みを明らかにする見通しを得た。提唱したゆらぎ利用情報処理アーキテクチャのCMOS集積回路化,単電子回路化については問題は生じなかった。しかし、提唱した半導体デバイスのための基本アーキテクチャをそのままの形で分子ナノシステム上に展開することが困難であった。ただし、既存CMOSプロセスの10%程度の配線制御が可能であれば、提唱したアーキテクチャの分子デバイス化が可能である。また、A04班との連携により、既存分子ナノプロセスの様々な制約が明らかになったため、今後はプロセス上の制限を考慮した上で、提唱したアーキテクチャの一部改良が必要である。
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