“動的非平衡プロセスである気-液-固相(Vapor-Liquid-Solid: VLS)反応法”に着目し、遷移金属酸化物を創発的に低次元ナノ構造化するメカニズムを解明し、従来困難であった階層を越えた遷移金属酸化物の高次ナノ構 造体を実現した。最終年度である本年度はこれまでに行ってきた新学術領域研究の総仕上げとして、九大・甲斐班との連携を介した理論・実験の比較検討により1次元ナ ノワイヤ形成における普遍的な原理の追及と、その原理に基づいて従来技術では不可能であった機能性材料のナノワイヤ構造化を実証した。これまでに 構築したナノワイヤ成長に関わる分子動力学計算結果と実験結果のより定量的な比較検討を行った。これに伴いこれまでは勘と経験に頼っていた1次元 ナノワイヤ形成における基礎科学に基づく普遍的な材料設計指針を与えた。このように見出された1次元ナノワイヤ構造を形成する創発原理に基づき、 従来技術の枠組みでは形成不可能であった機能性ナノワイヤ化を実現した。その代表として機能性酸化物材料の代表格であるペロブスカイト結晶形の材 料群をナノワイヤ化した。創発原理において重要なパラメータとなる蒸気圧・触媒融点等を勘案することにより新しい機能性ナノワイヤを具現化した。 加えて、形成された機能性ナノワイヤの微細構造・物性を評価するために、基板上に配置制御されたナノワイヤに対して走査電子顕微鏡観察を行った。 さらに、基板上に形成されたナノ構造の三次元的トポグラフ情報を原子分子レベルの分解能で得ることができる原子間力顕微鏡も適応する。原子間力顕微鏡には、走査型電子顕微鏡では行うことのできない電流電圧特性計測もできる。以上のように、創発原理に基づき従来技術では達成しえなかった階層を超えた新奇ナノ構造体の構造・物性を実証しつつある。
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