本研究提案では、電気化学的(或いは熱的)「揺らぎ」を与えることで従来困難であった有機材料の表面自己組織化構造や機能を創発し、本領域の基盤技術を確立する。また、清浄金属表面における揺らぎに触発された自己組織化構造は、創発による高次構造形成の良き理論モデルとなる。具体的には、金属単結晶表面を用いる有機分子の表面組織化法において電気化学的或いは熱的な揺らぎを与え、従来の表面分子組織化研究のデバイス応用への障害・欠点(限定された低材分子料や導電性表面)を克服し、従来実現できなかった(I)新しい機能性高分子材料(ナノ炭素高分子)の表面分子レベル合成と(II)金属表面上に形成した高度な分子配列構造の絶縁性表面への分子レベル転写の二つのブレークスルー(表面分子組織化の創発化学)を達成することを目的とする。本年度は以下の項目について検討を行った。(1)電気化学エピタキシャル重合で形成した分子細線素子の開発:ヨウ素で表面修飾した原子平坦金基板上で、導電性高分子であるポリチオフェンモノマーを電解質溶液中で、電気化学重合を行い、金属表面原子配列に沿って重合させ、分子レベルで1方向に表面重合した導電性高分子を作成し、イオン液体を用いた電界効果トランジスタを開発し、大きなホール移動度を見出した。(2)金属表面での前駆体からの配列重合:金属表面上に合成した前駆体分子(ペリレン、トリベンゾチオフェンの誘導体)を吸着させ、真空中で基板を加熱して表面拡散分子間での重合を行った。吸収スペクトル、導電率、ラマンスペクトルの測定から、重合による共役系の広がりが示唆された。
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