本研究提案では、電気化学的(或いは熱的)「揺らぎ」を与えることで従来困難であった有機材料の表面自己組織化構造や機能を創発し、本領域の基盤技術を確立する。また、清浄金属表面における揺らぎに触発された自己組織化構造は、創発による高次構造形成の良き理論モデルとなる。具体的には、金属単結晶表面を用いる有機分子の表面組織化法において電気化学的或いは熱的な揺らぎを与え、従来の表面分子組織化研究のデバイス応用への障害・欠点(限定された低材分子料や導電性表面)を克服し、従来実現できなかった(I)新しい機能性高分子材料(ナノ炭素高分子)の表面分子レベル合成と(II)金属表面上に形成した高度な分子配列構造の絶縁性表面への分子レベル転写の二つのブレークスルー(表面分子組織化の創発化学)を達成することを目的とする。本年度は以下の項目について検討を行った。グラフェンナノリボンの新しい化学気相合成法の開発:合成したジブロモアントラセン誘導体をモノマーとして用い、これらの分子固体を石英反応管中低圧下で蒸発させ、250度から400度に加熱した原子平坦な金(111)基板上に照射して化学重合を行ったところ、金表面上にアントラセン系ナノ炭素高分子の形成を確認した。ガス圧、反応温度、基板の設置位置などのパラメーターを検討し、最適化を行った。得られた重合物質のラマン分光測定、走査トンネル顕微鏡測定を行い、重合度や化学構造についての知見を明らかにした。
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