研究概要 |
従来の超分子化学は,熱力学的平衡,あるいはその近傍における分子の自己集合を前提として発展してきた.これに対し,自然界では物質やエネルギーが絶えず出入りするような開放条件下において,様々な秩序構造(散逸構造)が形成されている.このような非平衡系の自己組織化は,巨視的な秩序構造の形成現象としてのみ知られているが,これまでに分子レベルやナノスケールの世界に非平衡系の自己組織化を取り入れ,ナノ集積構造の制御を行う研究は先例がない. 一方,最近我々は,水-有機溶媒界面において熱力学的非平衡条件をつくりだすことにより,金(III)錯体と有機アンモニウムのイオン対からナノファイバー状構造が界面から成長し、それを光還元することによりナノ中空孔構造を有する金ナノワイヤーが合成されることを明らかにした.この報告は、ナノレベル散逸構造の存在を初めて示したものである.一方,このような液-液界面における動的なイオン対形成とその自己組織化プロセスを,電子顕微鏡を用いて直接観察することは不可能である.そこで本年度は,イオン液体-水界面において水相側へ有機カチオンが拡散してゆく非平衡条件下において,水中のアニオン性色素分子がイオン対形成ならびに自己集合するプロセスを直接CLSM観察した.イオン液体の種類や色素分子の濃度,水相への高分子の添加効果について検討し,界面での動的なイオン拡散流下では,速度論的にトラップされた特異な分子集合体が形成されることを見出した.具体的には,U字型のマイクロ構造を有する散逸超構造を見いだし、熱力学に支配される分子集積と散逸構造形成の融合に成功した
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