本研究課題は、『ATPとの結合形成/ADPへの加水分解に連動して開/閉運動する筒状タンパク質集合体「シャペロン」の改変体が、ある条件下で一次元的に自己集合し、数ミクロン以上の長いチューブ状構造体を与える』という申請者による最近の発見を基にしている。シャペロンは変成タンパクのリフォールディングを促す特異な生体機能を有している。リフォールディングは、シャペロンが変成タンパクを内部空孔に取り込む事により開始する。リフォールディングを終えたタンパクは、ATPが結合することで誘発されるシャペロンの機械的運動により空孔外に排出される。本研究では、シャペロンの自己組織化能と刺激応答性を組み合わせた、集積構造の次元性を創発的に相互変換させる仕組みの開拓、及び薬物や遺伝子などの知的なデリバリーの実現を念頭においた集積体の機能開拓を目指している。 初年度である本年は、まずシャペロニンナノチューブの形成条件の最適化を行った。その結果、シャペロニンナノチューブの形成にはフォトクロミック分子であるスピロピラン/メロシアニンでの修飾が必須であり、金属イオンの添加が効果的である事が判明した。特に2価イオンであるMg^<2+>やMn^<2+>、Co^<2+>、Zn^<2+>が効果的にシャペロン改変体を1次元集合化させることを見いだした。一方、1価のイオンであるNa^+やK^+、Cs^+では集合化させることが出来ず、Fe^<3+>やIn^<3+>、Ce^<3+>、Eu^<3+>等の3価のイオンでは集合化はするもののその集合は十分ではないことも明らかとした。
|