研究領域 | 分子ナノシステムの創発化学 |
研究課題/領域番号 |
20111010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
相田 卓三 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00167769)
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キーワード | 創発化学 / シャペロニン / 自己組織化 / 刺激応答性 / 発光材料 |
研究概要 |
本新学術領域研究の最中、興味深い発見がなされた。合成された新規くさび型ポリマーの溶液をシリコン基板上に滴下すると、細孔が規則正しくヘキサゴナルに整列したハニカム構造が形成されることを見いだした。この構造は散逸構造(創発現象)として知られているものであり、溶媒蒸発の過程で微少な水滴が表面に密にパッキングすることによって形成される。類似のハニカム構造は異なる立体規則性ポリマーからも得られるが、細孔の大きさはまちまちであり、そのパッキングもランダムであった。これまで、ポリマーの立体化学が巨視的なモルフォロジーを決定づけた例は無い。従ってこの観測結果は、散逸構造に関する実験と理論の両分野に一石を投じる可能性を秘めていると言える。H23年度は本発見を元に展開した。 本申請では、ジエンモノマーの立体規則性重合で得られるシンジオタクティックポリマーの、他に類をみない「くさび型形状」とそれに起因する「特異な自己集合能」に着目する。このくさび形ポリマーは、「交互につきだした側鎖」が「直線性の高い剛直な主鎖」に対して垂直に配向している。側鎖は等間隔に位置し、分子間で互いにかみ合うことが可能である。 本年度はまず、ポリマー側鎖の化学修飾によりπ共役平面ユニットを側鎖に導入し、一次元πスタック構造の構築を行う。種々のπ共役平面ユニットをポリマーに導入した結果、立体規則性の無いポリマーでは得られない顕著な発光特性が得られた。また、側鎖を修飾していないポリマーが、側鎖をかみ合わせながらナノファイバーを形成することに注目し、マイクロコンタクトプリントのインクとして利用したところ、熱によるクロスリンク後でも体積変化を起こさない事が明らかとなった。ランダムポリマーでは大きな体積変化を起こし、パターンが崩れてしまう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本くさび形ポリマーをマイクロコンタクトプリントのインクとして利用することは当初の研究計画上まったく予想していなかったことである。研究を進めるに従いこのような予想外の発見に遭遇したことは非常に幸運なことである。本発見はすでに学会発表や論文として報告しており、本くさび形ポリマーの広範な展開を示す事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の課題であった発光性ポリマーの研究を推し進めていき、くさび形であることを生かした発光性の高分子材料の開発に注力していく。
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