本新学術領域研究の最中、興味深い発見がなされた。合成された新規くさび型ポリマーの溶液をシリコン基板上に滴下すると、細孔が規則正しくヘキサゴナルに整列したハニカム構造が形成されることを見いだした。この構造は散逸構造(創発現象)として知られているものであり、溶媒蒸発の過程で微少な水滴が表面に密にパッキングすることによって形成される。類似のハニカム構造は異なる立体規則性ポリマーからも得られるが、細孔の大きさはまちまちであり、そのパッキングもランダムであった。これまで、ポリマーの立体化学が巨視的なモルフォロジーを決定づけた例は無い。従ってこの観測結果は、散逸構造に関する実験と理論の両分野に一石を投じる可能性を秘めていると言える。 本申請では、ジエンモノマーの立体規則性重合で得られるシンジオタクティックポリマーの、他に類をみない「くさび型形状」とそれに起因する「特異な自己集合能」に着目する。このくさび形ポリマーは、「交互につきだした側鎖」が「直線性の高い剛直な主鎖」に対して垂直に配向している。側鎖は等間隔に位置し、分子間で互いにかみ合うことが可能である。 特異な発光挙動を期待し、ポリマー側鎖の化学修飾によりπ共役平面ユニットを側鎖に導入することで、一次元πスタック構造の構築を行った。種々のポリマーを合成していく中で溶解度が十分ではない化合物に遭遇し、分子デザインの変更もあったが、どうにかπ共役平面ユニットを側鎖に有するくさび型ポリマーを合成することに成功した。その結果かみ合いがつよいと考えられるポリマーについて、白色に近い発光挙動を示した。
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