(1)ポルフィリン-イミド分子の両端にカーボンナノチューブ電極を結合し、PCI原子間力顕微鏡を用いてその電気特性を計測したところ、整流比が非常に大きな電流-電圧特性が得られた。中心金属が亜鉛の場合とロジウムの場合では、立ち上がり電圧が異なることも明らかとなった。これらの分子の分子軌道計算を行い、大きな整流性を示す原因について考察した。 (2)三探針単一分子素子のための分子の合成に成功した。 (3)テルビウムポルフィリン・ダブルデッカー錯体の結晶構造の決定に成功し、ポルフィリンの窒素に一つプロトンが残っている構造であることがわかった。その交流磁化率を測定したところ、単一分子磁石としての特性は見られなかった。プロトンを塩基で引き抜いた化合物の合成とその結晶構造の決定にも成功し、プロトン体と比べ対称性が高くなっていることを確認した。また、アニオン体においては、単一分子磁石の性質を持つことがわかった。 (4)金ナノロッドを用いた小数分子電気特性計測に成功した。フェナントロリン誘導体の両端にチオールやジスルフィドを持つ分子を合成し、その分子のみおよびルテニウム錯体を測定したところ、ルテニウム錯体においてはヒステリシスを示すI-Vが得られた。 (5)これらの機能性分子を全自動合成装置を用いて組み合わせ「分子集積回路」を作るための基本反応を開発した。鈴木カップリングをキー反応とする逐次合成経路の開発に成功し、ポルフィリン三量体を逐次反応で合成した。 以上のように、単一分子の電気特性として重要なもののいくつかの実現に成功し、その集積化の方法開発も進展している。残りの2年以内に分子集積による高次機能の創発を成功させたい。
|