研究領域 | 分子ナノシステムの創発化学 |
研究課題/領域番号 |
20111014
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 恵 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50437373)
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研究分担者 |
齋藤 彰 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (90294024)
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キーワード | 分子ナノシステム / 非線形素子 / 平坦ナノギャップ電極 / 有機EL素子 / 金属微粒子 / 有機金属界面 |
研究概要 |
分子ナノシステムにおける創発現象をマクロへ接続しデバイス化を実現することを目的に、単一分子確率共鳴素子の開発を行った。具体的にはサブマイクロメートル幅の並行電極間に金属性CNTに単分子で強い非線形応答性が期待出来る有機分子を修飾させ、電極間を架橋した。金属との接触部分政びCNT同士の連結部に単分子が存在する。金属CNTは高い電気伝導度を持つ為に分子部分には強電界効果が期待出来る。この素子ではいかにCNTに分子を修飾させるか、またいかに分子が電界に対して大きな電荷移動非線形性を示すかがポイントとなる。CNTを修飾可能であり、かつレドックス反応を示す等の条件を満たす分子を選んだ。結果として大きな多経路確率共鳴効果が得られたとは言えないものの、低温にして電荷輸送の非線形性が現れた部分では明らかに同じ抵抗値よりも大きな信号の透過相関が得られた。これは世界で初めて二端子の多経路確率共鳴効果が実証されたことを示す可能性がある。これを今後検証する予定である。 また制御されたナノ界面において発現する新規な物理・化学現象をデバイス機能として取り込み、外部からの信号の入出力により機能発現を具現化する。これはすなわち有機/金属界面制御による機能創発となる。このテーマに関してはSTMを用いた個体表面上の表面単分子機能計測実験を行った。個体表面上の分子ナノシステムからの発光計測を観測・評価し、ナノ空間で束縛された分子ナノシステムの電子状態と、光子の偏光性の相関の本質を探究する。H23年度では極薄絶縁体薄膜上のキラル分子の単分子像計測までの条件を整えることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
領域の目指している「個々のユニットが多数集まることで発現する新機能創発」という最終目的は未だ得られていないのがこの評価の理由である。しかしながら個々の研究テーマにおける進展は十分に計画の予定を満たしている。
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今後の研究の推進方策 |
有機薄膜の電気伝導評価に関して、本年度は分子膜内の構造要素(マクロ形状及びπスタック距離)を変化させてその特性がどのように変化するかを計測する。また、他の有機素材において同じような特性を示す分子が無いか、またどのような条件で有機材料内CB伝導が発現するかを系統立てて調査し、観点から見た有機材料内電荷輸送の新たな電荷輸送モデルを提唱する。またこれらの分子薄膜を用いた確率共鳴素子の基礎評価を行い、共鳴素子の機能発現に必要な要素の洗い出しを行う。個々の分子機能を数多く試すことで世界初の分子ナノシステムによる確率共鳴効果を有した素子の完成を目指す。 STMを用いた表面単分子機能計測実験では、キラリティを発現した分子ナノシステムからの偏光発光計測を観測・評価し、ナノ空間で束縛された分子ナノシステムの電子状態と、光子の偏光性の相関の本質を探究する。キラリティは、不斉炭素を持つ単一分子からだけでなく、固体表面の存在及び自己組織化の制御により、キラルでない分子(プロキラル分子あるいはアキラル分子)が、ナノ空間で拘束されることにより、その分子ナノシステムからも発現する。前年度までにすでに絶縁体薄膜上のキラル分子の単分子像計測までの条件を整えることが出来た。本年は非キラル系分子の自己組織化構造、もしくは単一の表面吸着キラル分子を用いて、表面ナノキラリティを発現させ、円偏光発光分光計測により、その光学活性を実証する。
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