研究概要 |
本研究は、選択的スプライシング・パターンを生体内で可視化した選択的スプライシング・レポーター線虫を利用して遺伝学的解析で得られた選択的スプライシング制御因子の変異体を用いて、次の2通りの方法で、これら制御因子の標的遺伝子の網羅的探索とシスエレメントの同定を目指している。(1)RNA-seq法。本年度は、線虫のトランスクリプトーム解析のために、異なる株間で成長段階の条件を揃えて全RNAを抽出する方法を検討した。そして、卵を漂白法により回収して餌のない条件で孵化させることでL1ステージで同調することとした。続いて、次世代シーケンサーのひとつGenome AnalyxerII(イルミナ)によるシーケンスのためのRNA試料の処理方法を検討し、ポリA(+)RNAを2回精製してから化学的に断片化し、ランダムプライマーで逆転写し、続けて第2鎖を合成することで、条件の揃った試料調整が行えることを確認した。また、変異体における選択的スプライシング異常mRNAの品質管理機構による分解を抑えるため、品質管理因子とスプライシング制御因子の二重変異体を作成した。(2)CLIP-seq法。本年度は、生体内の制御因子を免疫沈降するための特異的抗体の調整を行った。これまでに研究代表者らが同定したスプライシング制御因子、ASD-1, FOX-1, ASD-2, SUP-12, UNC-75について、組換えタンパク質またはペプチドを用いてポリクローナル抗体を調製した。これらの抗体はいずれも、大腸菌や培養細胞で発現させた組換えタンパク質を検出し、あるいは免疫沈降できることを確認したが、線虫内在性のタンパク質を検出し免疫沈降できるのはウサギ抗ASD-2抗血清のみであった。
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