本研究は、選択的スプライシング・パターンを生体内で可視化した選択的スプライシング・レポーター線虫を利用して遺伝学的解析で得られた選択的スプライシング制御因子の変異体を用いて、次の2通りの方法で、これら制御因子の標的遺伝子の網羅的探索を試みた。 (1)RNA-seq法。野生型線虫株および各種選択的スプライシング制御因子変異体線虫株を同調飼育してL1ステージからポリA(+)RNAを精製し、化学的に断片化し、ランダムプライマーで逆転写してライブラリーを作製した。続いて、Genome Analyzer II(イルミナ)によるシーケンスを行い、それぞれ35塩基のシーケンスタグを数百万個ずつ得た。これを線虫ゲノムにマップし、遺伝子ごと、エクソンごとのタグ数の計数を行って、制御因子の標的エクソンの予測を試みた。現在、これらの予測を元に、実際に制御因子変異体で標的候補遺伝子の選択的スプライシング・パターンに異常があるか、実験的な検証を行っている。今後は、より正確な標的遺伝子予測方法を確立していく予定である。 (2)CLIP-seq法。内在性の制御因子を免疫沈降できるウサギ抗ASD-2抗血清を用いて、紫外線による生体内でのASD-2と結合RNAの架橋を試み、免疫沈降によるASD-2標的遺伝子の同定の可能性を検討した。しかし、免疫沈降による既知の標的RNAの濃縮が見られなかったことから、試験管内での放射性同位元素標識したRNAと組換えASD-2タンパク質の間の紫外線による架橋の程度を検討したところ、ASD-2は結合RNAとの架橋効率が悪いことが明らかとなり、ASD-2はCLIP法による解析には向かないと結論した。
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