mRNA前駆体の選択的スプライシングは、タンパク質の時間的・空間的多様性を生み出すための最も重要な機構である。さまざまな遺伝子の選択的スプライシングを細胞特異的、発生段階依存的に制御する機構は「スプライシング暗号」と総称されるが、その実体解明はあまり進んでいない。研究代表者らは、これまでに、線虫をモデルとして、選択的スプライシング・パターンを生体内で可視化するための選択的スプライシング・レポーター作製法を開発して、選択的スプライシング・パターンのプロファイリング、制御因子変異体の単離、シスエレメントの同定を行ってきた。 本計画研究では、これまでに研究代表者らが得た制御因子の変異体線虫を利用して、各制御因子の標的遺伝子を網羅的に探索・同定すること、同定した標的遺伝子の塩基配列を基に選択的スプライシングを制御するシスエレメントの配列を予測・検証すること、選択的スプライシング・レポーター作製法を利用して、発現する組織、標的エクソンとシスエレメントあるいはシスエレメント間の相対的位置関係や距離、制御因子のコピー数などをパラメータとして体系的な改変実験を行って、複数の制御因子によるスプライシング制御の協調性や拮抗作用などの規則性を明らかにすること、を通じて、多細胞生物の個体においてタンパク質多様性の鍵となるスプライシング暗号の解読に貢献することを目的とする。
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