計画研究
生命現象の基盤となる遺伝子発現の正確性は、細胞の保持する様々な品質管理機構によって保証されている。mRNAの品質はリボソームにより感知され、異常な翻訳終結が引き金となって分解が促進される。研究代表者は、真核生物における品質管理機構の全体像を理解することを目的として、(1)翻訳異常の認識機構、(2)異常タンパク質分解機構、ついて研究を行った。また翻訳異常の認識後のmRNA分解系の理解にはPablpによるmRNA安定化機構の解明が必須であるため、(3)ポリ(A)鎖結合因子によるmRNA安定化機構、についても研究を行った。平成23年度の研究成果は以下である。(1)異常タンパク質の分解機構:(1)「異常タンパク質の分解促進」というUpf複合体の新しい機能について分子機構の解析を行った。その結果、フォールディング異常がUpf複合体による分解促進を受ける条件であることが明らかとなった。(2)翻訳アレストに共役する新生ポリペプチド鎖の分解機構において機能する2つのE3ユビキチンライゲースの基質特異性が明らかとなった。(2)翻訳異常の認識機構:(1)ノンストップmRNAの迅速な分解(NSD)には終止コドン非依存の翻訳終結反応が必須である。翻訳終結因子eRF1/eRF3複合体と相同性を持つDom34/Hbs1複合体が、mRNAの3'末端で停滞したリボソイームを解離させることで、エキソソームによるノンストップmRNA迅速な分解を引き起こすことを明らかにした(Mol. Cell, 2012)。(2)連続した塩基性アミノ酸残基による翻訳伸長阻害(アレスト)に必須な因子として、40Sサブユニットに結合するRACK1を同定されたため、翻訳アレストによるmRNA分子内切断について解析を行った.その結果、翻訳伸長反応自体の阻害(translation arrest)とmRNA2次構造によるリボソームの阻害(road-block)によるNGDが別の機構であることが明らかとなった。(3)ポリ(A)鎖結合因子(Pablp)によるmRNA安定化機構:mRNA型非翻訳RNAの安定性を測定する系を用いてmiRNAによる発現抑制機構に必須なGW184の新たな活性を明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
東北大学薬学研究科に赴任し、研究環境が改善された。特に、実験テーマに熱心に取り組む学生が相当数確保できたことは、研究の進展に大きく貢献している。
平成24年度は最終年度であるので、これまでの研究結果を論文として作製する作業を行う。現在時点では、特に問題なく順調に研究は遂行されている。複数の原著論文を発表するために必要なデータは、ほぼ得られている。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
Molecular Cell
巻: 46 ページ: 1-12
10.1016/j.molcel.2012.03.013
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~idenshi/idenshi-j.shtml