本研究は、細胞統御に関わるmRNA結合タンパク質の標的分子の同定と標的分子の機能解析、ならびにシグナル伝達経路によるmRNA結合タンパク質の制御機構を明らかにすることで、mRNA結合タンパク質による細胞統御の分子メカニズム、ならびにシグナル伝達経路とRNA制御プログラムのクロストーク機構の解明を目的とするものである。 本年度は現在までに代表者が発見したmRNA結合タンパク質であるRnc1と、その標的mRNAであるMAPキナーゼホスファターゼPmp1 mRNA間の相互作用をモデルとして、mRNA結合蛋白質とmRNAの結合を、迅速かつ定量的に測定、解析する方法を開発し、特許出願を行うとともに、これらの成果を論文発表した。 さらに、MAPキナーゼの標的mRNAとして、細胞表面タンパク質であるEcm33を同定し、細胞統御シグナルのキープレーヤーであるPmk1 MAPKが、mRNA結合タンパク質のリン酸化と機能制御に関わるという自らの成果に立脚し、mRNA発現を指標としたレポーターを用いて、MAPKの活性をリアルタイム、かつ定量的に測定する方法を開発し、特許出願を行った。この方法を活用することで、細胞増殖、癌化シグナルを制御するmRNA結合タンパク質の解析のみならず、抗癌剤の開発等にも貢献できると考えられる。 また、現在までに研究代表者が同定したmRNA結合タンパク質Nrd1がMAPKによるリン酸化依存的にmRNA結合能力が制御されるという自らの研究成果に着目し、Nrd1がリン酸化依存的にRNA顆粒に局在することを見出した。また、Nrd1過剰発現はRNA顆粒の形成を誘導することも明らかにした。これらの成果を活用することで、mRNA結合タンパク質の新たな生理機能の解明に加えて、mRNA結合タンパク質とシグナル伝達経路、RNA顆粒とのクロストークメカニズム、ならびにRNA制御プログラムの解明に貢献できると考えられる。
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