研究領域 | 多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム |
研究課題/領域番号 |
20112008
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
杉浦 麗子 近畿大学, 薬学部, 教授 (90294206)
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キーワード | mRNA結合タンパク質 / MAPキナーゼシグナル / mRNA安定性 / RNA顆粒 / モデル生物 / 分裂酵母 / 抗がん剤感受性 |
研究概要 |
本研究は、細胞統御に関わるmRNA結合タンパク質の標的分子の同定と標的分子の機能解析、ならびにシグナル伝達経路によるmRNA結合タンパク質の制御機構を明らかにすることで、mRNA結合タンパク質による細胞統御の分子メカニズム、ならびにシグナル伝達経路とRNA制御プログラムのクロストーク機構の解明を目的とするものである。 本年度は、現在までに代表者が発見した細胞質分裂と減数分裂という細胞運命調節の鍵を握るmRNA結合タンパク質であるNrd1がMAPKによるリン酸化依存的に標的mRNAとの結合能力が制御されるという自らの研究成果に着目し、Nrd1がリン酸化依存的に各種の環境ストレスに応答してRNA顆粒に局在することを見出した。Nrd1はそのRNA結合配列が高等生物のTIA1と類似し、ストレス顆粒における役割も類似していることから、Nrd1がTIA-1同様ストレス顆粒形成の引き金を担うのではないかと推測される。 TIA1と同様に、Nrd1過剰発現はRNA顆粒の形成を誘導するが、そのメカニズムとして、Nrd1はストレス顆粒の起点を形成し、poly(A)RNA結合タンパク質などのストレス顆粒構成因子をリクルートすることを明らかにした。さらに、Nrd1ノックアウト細胞は各種のストレスに対して感受性を示すことから、ストレス顆粒の形成において中心的な役割をするNrd1がストレス応答に重要であることが明らかとなった。 一方、ストレス顆粒の構成因子であるPolyA-BP、KHタイプmRNA結合タンパク質をコードするvgll^+をノックアウトすると抗がん剤であるドキソルビシンに感受性を示すこと、ドキソルビシン処理により、熱ショックによるストレス顆粒誘導効率が劇的に上昇することも見出した。これは、抗がん剤耐性機構にストレス顆粒が関与するという初めての報告である。これらの成果は、mRNA結合タンパク質の新たな生理機能の解明に加えて、mRNA結合タンパク質とMAPKシグナル伝達経路、RNA顆粒とのクロストークメカニズムの解明に重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Nrd1がMAPKシグナル依存的にストレス顆粒に局在するのみならず、TIA1と同様にストレス顆粒形成に重要な役割を果たすことを明らかにした点、またストレス顆粒の生理的な意義に加えて、抗がん剤耐性のメカニズムにも深く関わることを提唱できた点が重要な進歩である。
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今後の研究の推進方策 |
現在遺伝学的手法で同定したRNA結合タンパク質Rnc1の局在制御のメカニズム、さらにRNAヘリケースDed1とMAPKシグナルとの関わりについて、標的mRNAの同定、標的mRNAのmetabolismや局在化への影響などを調べていく予定である。 標的mRNAの可視化に関しては、微量なものなどはin situの手法のみでは困難なことも予想されるため、タグ付加などの手法も視野に入れて検討を行う。
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