研究概要 |
本研究は、高等真核細胞における自然免疫系の誘導に関与する細胞内ウイルスセンサー分子であるRIG-Iヘリカーゼファミリー(RIG-I,MDA5,LGP2)によるRNA認識の分子メカニズムを解明すると共に、それらと内在性RNAとの相互作用に注目したRIG-Iファミリー分子による細胞機能制御機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、これまでに明らかにしてきたRIG-IによるRNAの認識ドメインについての解析をさらに進めると共に、他の二つのファミリー分子であるMDA5とLGP2についても同じ領域の解析を行い、ファミリー分子間でのRNA認識様式の相違について明らかにした。一方で、RIG-IとMDA5にアミノ酸置換をもたらす一塩基多型について解析し、それらの変異と分子機能との関係を明らかにした。これらの結果は、ウイルスセンサーによるRNA認識についての理解を深めると同時に、疾病との関連についても新たな知見をもたらしたと考えられる。一方、RIG-Iは5'末端に三リン酸をもつRNAを特異的に認識することが明らかになっているが、内在性にも5'三リン酸を持つRNAが発現することを見いだした。現在、これらとRIG-Iとの関係についての検討を行っており、次年度以降に詳細な解析を行いたいと考えている。一方、RIG-Iファミリーと内在性RNAの関係を考えるうえで必須であるRIG-Iを介したシグナルの生理機能についての解析を行った。RIG-I変異体と薬剤を用いることにより、ウイルス感染なしに人工的にRIG-Iシグナルを細胞内へ導入する実験系の樹立に成功しており、この新しいシグナル誘導系を用いることにより、RIG-Iシグナルの生理的な機能を詳細に解析することが可能となった。
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