研究概要 |
ウイルスRNAセンサーであるRIG-I-like receptor(RLR)によるRNA識別の分子機構を明らかにするために、三種のファミリー分子RIG-I, MDA5, LGP2それぞれのC末端領域(CTD)の機能解析を行った。その結果、いずれのCTDも塩基性アミノ酸残基に富む溝状構造を形成していることが明らかになった。さらに生化学的な解析から、このうちRIG-IとLGP2については、この溝状構造が実際にRNA認識に深く関わっていることが明らかになり、両者が共通した基質RNAを認識することで、その生理機能を発揮していることが強く示唆された。しかし一方で、MDA5 CTDの溝状構造は、比較的開いた構造をとっており、実際に基質RNAとの結合は非常に弱いことが明らかになった。従って、MDA5の場合は、CTD以外のドメインあるいは他の補助分子によってそのRNA認識が制御されていることが強く示唆された。来年度は、このRNA認識機構の解析を進めると共に、RNA認識によってどのようにしてタンパク質全体が活性化状態へ移行するのかについて検討を加える予定である。 一方で、RIG-Iの基質として同定されている5'末端に三リン酸をもつRNAについて検討した結果、ウイルスRNAだけでなく、内在性のRNAの中にも5'三リン酸構造を持つものが発現していることを見いだし、少なくともin vitroの解析では、RIG-Iの活性化を誘導できることが明らかになった。今後は、この内在性RNAが実際にRIG-Iを介して何らかの細胞機能制御に関与しているのか否かについて、検討を行いたいと考えている。
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