研究領域 | 多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム |
研究課題/領域番号 |
20112009
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
米山 光俊 千葉大学, 真菌医学研究センター, 教授 (40260335)
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キーワード | ウイルス / シグナル伝達 / RNA |
研究概要 |
本研究では、抗ウイルス自然免疫誘導に重要な役割を担うことが知られるウイルスRNAセンサーRIG-I like receptor(RLR)のRNA認識を介した生理機能を明らかにすることにより、RLRが細胞運命制御にどのように関与しているのかについて明らかにすることを目的としている。本年度は、ウイルス感染に応答してRLRが形成する細胞内凝集体に注目し、その生理機能と実体解明を目指した解析を行った。その結果、この凝集体形成がインフルエンザウイルスなどの感染に応答したRLRシグナルの誘導に重要な役割を担っていること、またこの凝集体が、種々のストレス状態の細胞が内在性mRNAの翻訳停止に呼応して形成することが知られている凝集体と非常に類似していることを見いだした。すなわち、細胞がウイルス感染をストレスとして検知することによってこの凝集体を形成し、そこに集合してくるRLRがウイルス由来の非自己RNAを特異的に認識することにより、効率よく抗ウイルス自然免疫系を発動させていることが示唆された。このことは、外来性RNA検知による生体防御と内在性RNAの品質管理が、密接に関連して制御されていることを意味しており、今後の検討を通じて、自己および非自己RNAを介した細胞機能制御のメカニズムが明らかになることが期待される。一方、RLRのひとつであるRIG-Iの基質となり得る可能性がある内在性RNAを見いだし、それによる細胞機能制御機構について検討を行っている。本研究期間中に、RLRによる内在性RNA認識とその生理機能についての解析を続行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルス感染に応答した凝集体形成とその生理機能の解析について興味深い知見が得られ、現在論文投稿中である。一方で、RLRと内在性RNAとの関係に関する解析に若干の遅れがあるが、現在解析を続行中である。
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今後の研究の推進方策 |
RLRが形成する凝集体については、siRNAライブライーを用いた関連分子の同定を行い、得られた知見からより詳細な凝集体形成の分子機構を明らかにすることを目指す。また、生化学的な手法を用いた検討を平行して進め、それらの結果を総合的に理解することにより、RLRによる細胞運命制御の解明を推進する。一方で、RLRと内在性RNAの関係解明については、RLRと相互作用するRNAを網羅的に同定する試みなど、異なる方向からのアプローチを検討しており、研究期間中に一定の成果を得ることを目指す。
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