細胞の消化器官であるリソソームへは細胞外からエンドサイトーシス経路、細胞質からオートファジー経路が物質を運び込み、それらの物流システムによって、何が・いつ・どれだけ分解されるか、が巧妙に調節されている。本研究は、疾患とオートファジーの関係とエンドサイトーシス経路の制御機構の解明、オートファジーを制御する化合物探索を目的とする。本年度は以下の成果を得た。 1.感染症とオートファジー サルモネラに対するオートファジーでは、飢餓誘導性の通常のオートファジーとは異なり、Atgタンパク質群が3つのグループに分かれていて各々独立にサルモネラ周囲にリクルートされるという機構を新たに発見した。 2.がんとオートファジー 発がん抑制能を持つAtgタンパク質Bechnlに結合するRubiconのコンディショナルノックアウトマウスの作成に成功した。ショウジョウバエでは、Atg欠損個体ではがんの転移率が低下することが明らかになった。 3.エンドサイトーシス経路 大理石病の原因遺伝子PLEKHM1とRubiconがrab7エフェクターとしてエンドサイトーシス経路を負に調節していることを示した。Rubiconは、クラスIII-PI3キナーゼ複合体とrab7に同時に結合することで機能していた。 4.化合物スクリーニング 既に同定したサルモネラに対するオートファジーを阻害する化合物3種が、通常のオートファジーも阻害し、阻害は後期過程で起こることを見いだした。さらにGFP-RFP-LC3を用いたオートファジーのハイスループットアッセイ系を新たに開発した。このアッセイ法は、オートファゴオームの形成のみならず、リソソームとの融合による内容物分解までモニター可能である。これを用いて、化合物ライブラリー(理研NPdepo)のスクリーニングを行い、オートファジーを阻害する化合物を計18種同定した。
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