計画研究
細胞の消化器官であるリソソームへは細胞外からエンドサイトーシス経路、細胞質からオートファジー経路が物質を運び込み、それらの物流システムによって、何が・いつ・どれだけ分解されるか、が巧妙に調節されている。本研究は、疾患とオートファジーの関係とエンドサイトーシス経路の制御機構の解明、オートファジーを制御する化合物探索を目的とする。本年度は計画に従って以下の解析を行った。1)サルモネラは、エンドソームの内部にいるうちにエンドソームごとオートファゴソームに包まれることを明らかにした。サルモネラがエンドソームの膜を傷つけるとユビキチン化が起こり、その後オートファゴソームが選択的な包み込みを行う。膜の損傷~ユビキチン化~Atgタンパク質のリクルート、という順番で起こることをビデオ顕微鏡撮影で示した。サルモネラの変異体ライブラリーの解析からも、III型分泌装置による膜損傷がオートファジー誘導の引き金になることが示唆された。また何がユビキチン化されているのか、ユビキチンをどのようにして認識しているのかについて新たな知見を得た。2)Rubiconについて全身KO及び各種臓器特異的KOマウスを作成したので、現在表現形の解析を行いつつある。3)同定した阻害剤の阻害メカニズムについて解析を行いつつある。また、メルクミリポア社との共同研究により、キナーゼ阻害剤ライブラリーを入手したので、それを用いたスクリーニングを行い、有力な阻害剤及び促進剤候補を同定した。4)損傷リソソームが選択的オートファジーの標的となっていることを示唆するデータを得た。
1: 当初の計画以上に進展している
サルモネラの解析を通して、選択的オートファジーのこれまでのモデルを覆すデータを得ており、分野のパラダイムシフトを促すことになると思われる。またオートファジーの最終目的地であるリソソームそれ自身が損傷を受けるとオートファジーによる隔離の対象となるという全く新しい発見を行った。これまでに知られている損傷ミトコンドリアに対するオートファジーなどと考え合わせると、オートファジーの根源的機能のひとつは、損傷を受けたオルガネラ全般の除去であるという新たな概念が立ち現れてくる。いずれも予想外の進展である。
最終年度を迎え、まとめとなる研究を展開したい。特に大きな進展のあったサルモネラに対する選択的オートファジーのメカニズムの解明と、損傷リソソームのオートファジーによる選択的除去の発見について、詰めの実験を行って論文として発表したい。薬剤スクリーニングについても、少なくとも応用への道筋をつけたい。
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http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/yoshimori/jp/achievement/010/