研究概要 |
リソソーム関連オルガネラはリソソームが持つシステムを利用しながら特殊な生理機能を担うようになったオルガネラで、紫外線から我々の体を守るメラノサイト(メラニン色素を合成・貯蔵するメラノソーム)、ウイルス感染などを防ぐ細胞傷害性T細胞、血液凝固に関わる血小板などの特殊な細胞に見られる。これらのオルガネラはヒトの生命活動に必須の役割を果たすため、リソソーム関連オルガネラのバイオジェネシスや輸送の障害は様々なヒトの遺伝性疾患を引き起こす。近年これらの遺伝病の原因遺伝子が次々と同定されたが、これらの遺伝子産物の多くは未知の蛋白質であり、リソソーム関連疾患の分子レベルでの発症機構はほとんど解明されていない。当研究室では、これまでの研究でリソソーム関連疾患の一つGriscelli症候群に見られるメラノソーム輸送障害や顆粒放出異常に焦点を当て、独自に開発した「低分子量G蛋白質Rabの網羅的解析ツール(Rabパネル)」を用いて、メラノソーム輸送や顆粒放出に必須の因子を同定することに成功している(Pigment cell Melanoma,2010)。本研究課題ではリソソーム関連オルガネラの制御因子に焦点を当て、メラノソームをモデル系としてリソソーム関連疾患の基盤となっているリソソーム関連オルガネラの細胞内動態の分子メカニズムを異分野との融合を図ることにより解明することを目指している。本年度も、昨年度に引き続きRabパネルを用いた網羅的スクリーニングによりメラノソームのロジスティクスを制御する新規分子の探索を行うと共に(Traffic,2010)、Rab32/38結合タンパク質として新規に同定したVarpと呼ばれる分子が、実際にRab32/38のエフェクターとしてメラニン合成酵素Tyrp1の輸送(メラノソームの成熟過程)の過程で機能することを初めて証明した(JBC,2011)。
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