計画研究
リソソーム関連オルガネラはリソソームが持つシステムを利用しながら特殊な生理機能を担うようになったオルガネラで、紫外線から我々の体を守るメラノサイト(メラニン色素を合成・貯蔵するメラノソーム)、ウイルス感染などを防ぐ細胞傷害性T細胞、血液凝固に関わる血小板などの特殊な細胞に見られる。これらのオルガネラはヒトの生命活動に必須の役割を果たすため、リソソーム関連オルガネラのバイオジェネシスや輸送の障害は様々なヒトの遺伝性疾患を引き起こす。近年これらの遺伝病の原因遺伝子が次々と同定されたが、これらの遺伝子産物の多くは未知の蛋白質であり、リソソーム関連疾患の分子レベルでの発症機構はほとんど解明されていない。当研究室では、これまでの研究でリソソーム関連疾患の一つGriscelli症候群に見られるメラノソーム輸送障害や顆粒放出異常に焦点を当て、独自に開発した「低分子量G蛋白質Rabの網羅的解析ツール(Rabパネル)」を用いて、メラノソーム輸送や顆粒放出に必須の因子を同定することに成功している。本研究課題ではリソソーム関連オルガネラの制御因子に焦点を当て、メラノソームをモデル系としてリソソーム関連疾患の基盤となっているリソソーム関連オルガネラの細胞内動態の分子メカニズムを異分野との融合を図ることにより解明することを目指している。本年度も、昨年度に引き続きRabパネルを用いた網羅的スクリーニングによりメラノソームのロジスティクスを制御する新規分子の探索を行い、メラノサイトのフィロポディア形成に重要なRab17を同定することに成功した(Traffic,2011)。さらに、Rab32/38結合タンパク質として同定したVarpがRab21を活性化することによりメラノサイトの樹状突起形成も促進することを突き止めた(MBC,2012)。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は東日本大震災の影響もあったが、当初の目的の一つであるメラノソームのロジスティクスを制御する新規因子の同定に成功した。また、Varp分子にメラノサイトの樹状突起の形成促進作用があることを見出し、その研究成果を当該研究分野で評価の高い学術雑誌に発表すると共に、各種メディアにてプレスリリースを行い多くの社会的反響を得た。
引き続きメラノソームのロジスティクスを制御する新規因子の同定とその機能解析を行うと共に、メラノソームの細胞内動態を異分野融合によりモデル化することを目指す。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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