研究領域 | 細胞内ロジスティクス:病態の理解に向けた細胞内物流システムの融合研究 |
研究課題/領域番号 |
20113008
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清水 史郎 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30312268)
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研究分担者 |
近藤 恭光 独立行政法人理化学研究所, 化合物ライブラリー評価研究チーム, 専任研究員 (80333342)
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キーワード | ケミカルバイオロジー / 化合物アレイ / ジスルフィド結合 / NF-κB / RelB / G3BP / VCP |
研究概要 |
今年度も引き続き、計画班員、および公募班員からのリクエストに応じ、目的タンパク質と相互作用する化合物の探索を化合物アレイで行った。また、並行して、細胞の表現型を指標としたスクリーニングに用いるため、化合物溶液を班員に配布した。ヒット化合物に関しては、さらに細胞内で標的タンパク質にだけ作用しているか否かを検討した。また、作用が分かっている阻害剤を用いることで新たな生物学の発見に貢献した。 具体的な成果としては、NF-κB阻害剤である(-)-DHMEQを細胞に処理すると、NF-κB構成因子の1つであるRe1Bの発現量が低下した。そのメカニズムとして、核内に移行できないRelBやDNAとの結合能が失われたRelBが不安定化されることを(-)-DHMEQと分子生物学的手法を用いて明らかにするこ・とができた。さらに、乳がん細胞株において、galectin-3-binding protein(G3BP)の発現がNF-κBを介しており、乳がん細胞のフィブロネクチンへの接着にG3BPが重要な役割を担っていることが示された。また、オートファジーに関連する化合物としてキサントフモールが同定されたが、その標的は不明であった。キサントフモールを固定化したビーズを作製し、標的タンパク質を同定した結果、VCPであることを明らかにした。さらに、昨年度報告したprotein disulfide isomerase(PDI)阻害剤、ジュニフェルジンに関連し、がん細胞の転移・浸潤に重要な役割を担っているMMP-9のジスルフィド結合を質量分析により全て明らかにすることができた。そして、種々の変異体発現細胞を樹立することで、それらのジスルフィド結合の役割を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ケミカルバイオロジー研究を遂行するために、特異的な阻害剤の取得と、それらを用いた生物学の解明が課題である。本年度は、VCP阻害剤のキサントフモールの発見や、NF-κB阻害剤(-)-DHMEQを用いたRelBタンパク質不安定化の解析、およびG3BPを介した乳がん細胞の接着機構を解明することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらなるケミカルバイオロジー研究の推進を目指して、今年度までに取得した阻害剤の詳細な解析を行う。標的タンパク質候補の過剰発現細胞の樹立により薬剤感受性が付与されるか否か、さらにsiRNAによるノックダウン実験を行い、表現型が薬剤処理時と一致しているか否かを確認する。 スクリーニングも継続して行う。化合物アレイを用いて、標的タンパク質との相互作用を指標にする一方で、細胞を用いた表現型スクリーニングも並行する。
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