研究概要 |
真核生物のゲノムは染色体として細胞核に収納され継承される。本研究の目的は、遺伝情報の正確な継承を保証する時空間「場」の特性を明らかにし、継承のメカニズムを分子レベルで理解することにある。これまで、蛍光タンパク質ライブラリーによる局在解析やDNAマイクロアレイによる発現解析をもとに、遺伝情報の継承に関わる蛋白質群および遺伝子群の検索を行ってきた。本年度は、検索で得られた候補タンパク質について、分裂酵母において遺伝子破壊株を作成し、その遺伝子産物の機能を解析した。これらの遺伝子破壊株についてテロメアの局在を蛍光顕微鏡で解析し、その結果、テロメアを核膜につなぎとめるタンパク質群を同定した(Chikashige et al., 2009, J.Cell Biol.)。さらに、この結果に基づき、染色体の核内配置を決める普遍的な仕組みを提唱した(Hiraoka and Dernburg, 2009, Develop. Cell)。また、動物培養細胞を用いた研究においては、転写因子の細胞内局在制御による転写抑制の仕組みについて明らかにし、論文を発表した(Ogawa et al., 2009, Mol.Biol. Cell, 2009)。さらに、染色体構造に影響を与える遺伝子群を検索し、その染色体構造を蛍光顕微鏡で解析した。染色体構造を解析するには、染色体に沿った2点(もしくは2点以上)が光る染色体を持つ細胞株を作成し、この細胞株を用いて2点間距離を計測し、DNAの凝縮率を算定した。遺伝子破壊株で同じ計測を行い、野生型と比べて凝縮率が異なるものを検索し、染色体構造に関わるタンパク質を見つけた。このような細胞株で、DNAの一次元配列がクロマチン中でどのような3次元配置を持っているかを、大規模リアルタイムPCR装置を用いて詳細に解析し、予備的なデータを取得した。
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