研究概要 |
真核生物のゲノムは染色体として細胞核に収納され継承される。本研究の目的は、遺伝情報の正確な継承を保証する時空間「場」の特性を明らかにし、継承のメカニズムを分子レベルで理解することにある。これまで、蛍光タンパク質ライブラリーによる局在解析やDNAマイクロアレイによる発現解析をもとに、遺伝情報の継承に関わる蛋白質群および遺伝子群の検索を行ってきた。本年度は、分裂酵母の核膜タンパク質の検索を行った。このうち、3つの核内膜タンパク質Ima1,Lem2,Man1に注目して解析を行ったところ、これらのタンパク質が相互作用しながら核膜構造を維持することが明らかになった(Hiraoka et al., 2011, Genes Cells)。分裂酵母の減数分裂期においては、核膜や核膜孔の消失を伴わずに核細胞質問バリア機能を変化させる新奇な現象を発見した(Asakawa et al., 2011, Nucleus)。また、酵母の異数体細胞では、DNA損傷修復が低下しゲノムが不安定になることを報告した(Sheltzer et al.,2011,Science)。ヒト培養細胞を用いた研究においては、転写因子の細胞内局在制御による転写抑制の仕組みについての解析を行い、新しい制御タンパク質を発見した(Tsuchiya et al., 2011, PLos ONE)。さらに、染色体構造に影響を与える遺伝子群を検索するために、分裂酵母を用いて染色体構造を蛍光顕微鏡で解析し、野生型と比べて凝縮率が異なる変異株をいくつか見いだした。このような細胞株で、減数分裂の進行に伴うクロマチン構造変化とその制御について解析を進めている。
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