本研究は、DNAの物理的特性やトポロジーに着目し、ゲノム・遺伝子の核内収納機構、クロマチン基盤構造構築の分子機構、ならびにそれらのダイナミクスを解明することを目的とする。我々は、これまでにヒトゲノム全長に渡る洲Aの柔軟性マップを完成させた。そして、ヒトゲノムには数Mbの周期で極めて柔軟な特性をもつ10kb程度の小領域(SPIKEと命名)が分布していることを発見した。SPIKEはヒトゲノムの収納機構に何らかの役割を果たしていると推察される。そこで本研究では、SPIKEを糸口にしてゲノムの収納機構にメスをいれることをひとつの"柱"にしている。 今年度は、(1)各種真核生物ゲノムの柔軟性マップの作成、(2)三次元FISH法によるSPIKEの核内局在の解析、(3)SPIKEの生細胞内ダイナミクスの解析、の3項目の研究を進めたが、研究期間が実質4ヶ月間しかなかったこともあり、大きな進捗が見られたのは項目(1)のみであった。以下、項目別に進捗状況を報告する。 (1) 各種真核生物ゲノムの柔軟性マップの作成 : ヒトゲノムの柔軟性マップを作成したときと同じ手法で、酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウス、チンパンジー、シロイヌナズナの各ゲノムを対象として、D甑の柔軟性マップの"精密版"を完成させた。 (2) 三次元FISH法によるSPIKEの核内局在の解析 : ヒト正常繊維芽細胞WI-38を用いて、21番染色体の17.3および33.6Mbの位置に存在するSPIKEを標的とした解析を行った。BACクローンからSPlKE配列を大量に調製し、蛍光標識した。これをプローブとして、常法により三次元FlSHを行い、間期細胞核内における各SPlKEの配置に関して、予備的なデータを得た。 (3) SPIKEの生細胞内ダイナミクスの解析 : lac0/laGl-GFP法で用いるDNAコンストラクトの構築を進めた。
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