研究概要 |
我々は、ヒトゲノムには数恥の周期で極めて柔軟な特性をもつ10kb程度の小領域(SPIKEと命名)が分布していることを数年前に発見した。SPIKEはヒトゲノムの収納機構に何らかの役割を果たしていると推察される。そこで本年度はSPIKEの局在解析を精力的に進めたが、未解決問題である間期核内のクロマチン構造についても研究を進めた。それぞれの成果について述べる。 SPIKEの局在解析:ヒト21番染色体内には11箇所にSPIKEが存在する。今回、ヒト正常繊維芽細胞WI-38を用いて、分裂期および間期におけるSPIKEの局在をFISH法により調べた。まだ予備的な結果ではあるが、分裂期染色体内では他の領域と比べてSPIKEは比較的近接して存在していることが示唆された。一方、間期においてはSPIKEと他の領域との違いは確認できなかった。従って、SPIKEは分裂期染色体の構築に何らかの役割を担っていることが強く示唆された。 間期核内のクロマチン構造:出芽酵母の間期クロマチンを対象として構造モデリングを行った。柔軟性の異なる約500 bpのDNA断片を5種類用意し、DNAの柔軟性と持続長の関係を明らかにした。次に、この関係からクロマチン内のすべてのリンカーDMの持続長を算出した。そして、得られたデータとSegalらにより報告されたヌクレオソームの配置のデータ(Nature,2006)から、全染色体の間期クロマチン像をモデリングした。得られた結果は、クロマチン内の2点間空間距離に関して、既に報告のある実験データとすべて良い一致を示すことが判明し、間期のクロマチン構造を忠実に反映していることが確認できた。 なお、これらの研究に加え、SPIKEの生細胞内ダイナミクスの解析、各種真核生物ゲノムの柔軟性マップの作成、ヌクレオソームの自己集合能の解析、についてもそれぞれ研究を進めた。
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