二つの大きな研究成果が得られた。(1)DNAの物理的性質と核の大きさによって間期染色体の基本的な構造が決まることをほぼ解明した。具体的には、DNAの物理的性質によりヌクレオソームの配置とリンカーDNAの拡がりが決まり、核の大きさによりリンカーDNAの拡がりの方向が決まることを解明した。また、この原理を用いて、出芽酵母の全染色体(16本)の間期核内構造を、10nmクロマチン繊維の折りたたみが識別できる分解能でモデル化した。さらに、全染色体が核内で共存している様子もモデル化した。なお、得られたモデルは2点間の空間距離に関して、これまでに報告されている全ての実験データとほぼ完全に一致し、その正確さが証明された。(2)ヌクレオソームに自己集合能があることが明らかになった。これまでに同じ塩基配列をもつDNA同士が選択的に相互作用すること(DNAが自己集合すること)を、我々のグループで解明していたが、今回、DNAがヌクレオソームを形成していても選択的相互作用が起きることが解明された。この現象は、原子間力顕微鏡を用いて明らかにされたものであるが、DNAの自己集合現象の場合と同様、生理的濃度のマグネシウムイオンの存在が必須であることも明らかになった。これらの成果は、いずれも遺伝情報がクロマチンという形をとって折り畳まれる際の基本原理または基本メカニズムに迫る内容であり、「遺伝情報場」の理解のために、当初計画した研究が順調に進捗していることを示している。
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