研究概要 |
細胞核内外の物流や構造を、時空間の関数として「その場」計測するため、1分子イメージング観察と定量法を最適化した仕様の構築済み顕微鏡を、さらに改良した。まず光学系の収差の極小化を行い、細胞内部特に核内の1分子画像が理論点像に近づくよう結像系全般を見直し、使用レンズとその配置を昨年度に引き続き最適化した。また、機械的ドリフトを最小限にする焦準機構の導入改良を行った。染色体は、非常に多くの蛋白質と複合体を形成し、高度に高次な構造体として機能している。しかも、その構造は、転写・複製・修復・組換えなどの生命現象において一定不変でなくダイナミックに変化し、機能に応じ、特定の時期に特定の局所領域に限局して段階的に起こる。染色体の局所領域に一過的に作られる、この特殊な構造と変化を明らかにするため、個々の時空間場で直接観察計測できるという1分子イメージング定量技術の特性を生かすべく、細胞の厚みより薄い局所的照明であるHILO照明法を用いている。生細胞の生体1分子イメージングにおいて従来の楽射照明法よりも最高で8倍のシグナルノイズ比の高画質が得られる。この性能を活かしつつ、遺伝情報「場」計測のための、昨年度行った450-750nmの任意の2~3色の蛍光を同時に1分子観察できる顕微鏡システムを、さらに発展させ、蛍光4色対応とした。昨年度までの、生きた試料の臨機の変化に観察中随時に対応するPC制御システムを、さらに改良した。細胞内部での高S/N比の画像を生かし、細胞内部における分子数・濃度・相互作用時間・解離定数・拡散係数・物理的動態特性といったパラメータを、多種分子・時間・空間の関数として求める研究を進めた。転写因子、RNA Polymerase II、クロマチン構造関連分子をGFP, RFP標識した細胞を作成し、遺伝情報場の「その場」計測を昨年度に引き続き展開した。
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