遺伝子の発現、DNAの複製、組換え、修復は、染色体の核内配置やダイナミクスによって制御されている。本研究では、染色体と物理的・機能的に相互作用する核内複合体を遺伝情報「場」の実体として考え、それらの動作メカニズムを生化学的および構造生物学的手法により解析することを目的とする。具体的には、核内複合体の機能・構造解析をクロマチンレベルで行うために、クロマチンをリコンビナント蛋白質群によって再構成する系を確立し、クロマチン構造の動的および機能的性質を、生化学的および構造生物学的手法によって明らかにする。さらに、DNA組換え、修復に関与する新規因子の探索をtwo-hybrid法およびプロテオミクス法などによって行い、それら新規因子の機能解析を生化学的手法によって行う。本年度は、ヒトで報告されている5種類すべてのピストンH3バリアントを含むコアヒストンのリコンビナントとしての大量発現系を構築し、それらの高鈍度の大量精製系の確立に成功した。それによって、細胞内ではピストンの修飾などのために不均一な状態であるクロマチンを、解析が可能な均一な複合体として再構成することが可能になった。そしてそれらのリコンビナントヒストンによるヌクレオソーム再構成実験を行い、クロマチンの基盤構造であるヌクレオソーム形成のピストンH3バリアント特異性について検討した。また}クロマチンの機能発現に重要な新規の核内複合体を同定するために、これらの精製したピストンH3/隅に結合する因子群のプロテオミクス解析をHeLa細胞抽出液を用いて行い、ピストンH3/H4結合因子の候補蛋白質群リストを作成した。さらに、遺伝的組換えや二重鎖切断修復の際に働く新規蛋白質群を、two-hybrid法およびプロテオミクス法により同定し、DNA組換えの中心酵素であるRAD51の新たな活性化因子として、EVLおよびPSFを同定した。
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