計画研究
遺伝子発現がゲノムのDNA塩基配列情報だけではなく、ヒストンのメチル化アセチル化などの修飾によるクロマチン構造、さらにはより広範な染色体領域の高次構造の変化、すなわち遺伝情報「場」によっても制御されていることが明らかにされている。これを踏まえて、初期発生の過程での細胞分化における遺伝情報「場」の機能を明らかにするために、ES細胞を用いて、クロマチン高次構造とその機能の解析を進めた。昨年度までに確立した、ヒトES細胞から中胚葉性細胞への細胞分化を効率よく誘導するシステムを利用し、この過程でクロマチン高次構造の構築に関連していると考えられるクロマチンリモデリングやヒストン修飾に関わる遺伝子の発現を詳細に解析した。マイクロアレイ解析では精度が十分でないと考えられたため、150以上の遺伝子についてリアルタイムPCRを行うことで精度良く関連する遺伝子の発現を解析することができた。解析した遺伝子の中から、その発現が分化誘導前後や分化時間の経過に伴い変化するものを抽出した。研究開始当初は相当数の遺伝子に発現変化が見られると見ていたが、実際には2倍以上の発現変動が認められた遺伝子は数個にとどまった。これらの遺伝子について機能解析を進める予定である。また、いくつかのヒストン修飾について細胞分化に伴う細胞内局在の変化のモニタリングに適した抗体を選別した。また、特定のクロマチン構造に関連すると考えられるヒストンバリアントについて、その局在を生細胞で観察するために、GFP等の蛍光蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターの構築を開始した。本研究では、これらの解析を通じて、「遺伝子発現制御機構という枠組みを越えて、クロマチン高次構造それ自体が、情報の伝達や機能発現に関与する」という概念の創出をめざす。
すべて 2010 2009
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