線虫C. elegansの初期胚をモデルとして、細胞核内で遺伝情報を取り巻く環境について空間的視点から定量化し、遺伝情報場の理論を提唱することを目的とする。本研究では遺伝子収納の場である核の大きさに着目する。当該年度での成果は以下の通りである。 (1)線虫C.elegansの初期胚発生過程における細胞分裂期の染色体の凝縮について解析を行っている。前年度までに、核の大きさと染色体の凝縮とに相関があることを見いだしていた。本年度は核空間が染色体のおりたたみに及ぼす影響についてコンピュータシミュレーションにより見積っている。シミュレーションした染色体の挙動は、核の大きさ依存にいくつかの変化をみせた。この変化と染色体の凝縮度の関連について、シミュレーションおよび実験両面から見当している。 (2)線虫C.elegansの初期胚発生過程における染色体の動態を可視化、定量化した。これにより染色体の核内での「動きやすさ」も発生過程で異なることが示唆された。現在は、さまざまな条件で染色体の動態を比較するとともに、染色体動態をコンピュータシミュレーションと比較して、発生途上の「核場」の違いと染色体の動態とを理論的に結びつけたい。
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