動物は、外界からの様々な情報を中枢神経系で処理し、環境に適切に応答している。このような情報処理は、多数の神経細胞で構成された神経回路において行われている。神経回路における情報処理のメカニズムを明らかにするためには、実際にどのように協調して神経回路が働いているかを解析する必要がある。私達は、単純な神経回路を持つ線虫C. elegansをモデルとして用いて、イメージングや遺伝学の手法を用いて、情報処理のメカニズムを解析している。 私達は、これまでの解析から、二つの異なる化学物質に関わる感覚情報の統合を制御する神経回路モデルを提唱している。本年度は、4Dイメージングシステムを用いて、この神経回路における情報処理機構を可視化することを進めた。感覚ニューロンと介在ニューロン、それぞれのニューロンに発現させるCa2+プローブを最適化し、4Dイメージングシステムにより観察したところ、感覚ニューロンからのシグナルが、介在ニューロンに興奮性及び抑制性に伝達されることが確認できた。とくに、介在ニューロン間での抑制的な神経結合があることが分かったことから、我々の神経回路モデルを裏付ける結果が得られていると考えている。 感覚情報処理に関わる変異体のスクリーニングと原因遺伝子の解析も進めた。本年は、嗅覚に関わる変異体を同定した。その原因遺伝子の同定をするため、一塩基置換を用いて染色体上の領域を狭めるとともに、全ゲノム配列の解析を行い、タンパク質コード領域中の変異を同定した。
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