研究領域 | 神経系の動作原理を明らかにするためのシステム分子行動学 |
研究課題/領域番号 |
20115004
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
新貝 鉚蔵 岩手大学, 工学部, 嘱託教授 (00089088)
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研究分担者 |
岩崎 唯史 茨城大学, 工学部, 助教 (50282281)
若林 篤光 岩手大学, 工学部, 助教 (30332498)
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キーワード | 線虫 / 行動解析 / 行動選択 / カルシウムイメージング / ニューロンモデル / 神経回路モデル |
研究概要 |
計測と数理的解析・モデル化により、線虫に2種類の誘引性感覚刺激を同時に与えた場合の行動選択の神経系制御機構に関する次の研究を行った。 1)移動運動・化学走性・温度走性の行動データの統計解析によって行動選択の神経メカニズムを解明する目的で、一匹毎の線虫の行動を詳細に解析するための解析ソフトウエアを充実させた。特に、(1)運動の定常性からのズレを求めるプログラム、および(2)運動方向を頻繁に変える状態の解析プログラムを作成して、実験者でも解析に使用できることを確認した。プログラム(1)を移動運動の解析に適用して有用性を示す論文原稿を作成中に当該年度は終了した(新貝)。また、プログラム(2)を温度走性、化学走性データに適用しつつある(新貝、岩崎)。 2)細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>])変化を計測し、塩とブタノンの同時刺激で神経系内での相互作用を見出したので、行動の結果と共に論文原稿にまとめた(次年度初めに投稿;一條研究員、若林、新貝)。 3)神経モデルの研究で次の成果を得た。(1)匂い感覚AWCニューロンの匂い刺激に対する[Ca^<2+>]変化を再現する細胞内情報伝達系モデルを作成し、論文を投稿した(改訂中;新貝)。(2)塩への走性行動に関する神経回路のニューロンの、[Ca^<2+>]変化および蛍光プローブ(G-CaMPとFRET用プローブ)が発する蛍光強度変化を、再現する詳細なモデルを作成した(岩崎)。(3)線虫頭部の神経回路を対象として、同じクラスに属する左右一対のニューロンを1個のニューロンで置換えて簡略化した回路について、誘引性および忌避性感覚刺激に対する応答モデルの論文原稿を作成中に当該年度が終了した(新貝、協力者坂田、岩崎)。また、302個全てのニューロンから成る神経回路の結線をプログラム上で繋いで、この全神経回路の動作を次年度に調べる基礎を作った(新貝)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度論文が出ていないが、いずれも長期間の研究が必要な内容である。感覚ニューロンモデルの論文は投稿後改訂中である。蛍光計測実験結果の原稿、神経回路の2編の論文原稿、行動解析の2編の原稿も年度末までにおおむね出来上がった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度前期に上記の論文がアクセプトされるようにする。このほか、進行中の変異体の行動解析、酸忌避に関する行動解析、線虫全神経回路の解析をそれぞれ完成させる。このために研究員・技術補助員が最大限の力を発揮できるように連携を強化すると共に、領域内外の研究者とのコンタクトを積極的に図りたい。
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