研究概要 |
近年,環境中に存在する化学物質が生物に与える影響を定量評価するためのセンサシステムの必要性が指摘されている.本研究では,線虫・マウス・小型魚類を主な対象として,生物の情報処理メカニズムを工学の立場から読み解き,融合し,革新的な生物模倣型(バイオミメティック)のセンサシステムの構築を目指す.本年度は,線虫の全身と咽頭筋の運動生成メカニズムの解明,マウス嗅覚系モデルによるにおい感覚予測,小型魚類の生体信号計測・処理技術の確立を目的とし,以下の成果を収めた. (1)線虫の神経-筋モデルを用いて刺激応答の神経情報処理メカニズムを探る: 昨年度構築した線虫の身体モデルと筋モデルを用いて,実生物の動画像から全身の運動生成に必要な筋の駆動トルクと筋活動を推定する新しいアルゴリズムを提案した.また,「咽頭筋のポンピング運動(嚥下・咀しゃく)」に着目して放射線応答を調べた.その結果,放射線照射直後の運動性が線量依存的に低下すること,この運動低下が照射後数時間で完全に回復することなどを明らかにした[4th East Asia C.elegans Meeting]. (2)マウスの匂い識別アルゴリズムを実装した匂いセンサシステムを開発する: 本年度は,ニオイ分子の2次元構造を入力することで,実験的手法で計測したラットの糸球体の神経活動を予測できる新たなモデルを構築した[Chemical Senses]. (3)小型魚類を用いたバイオアッセイ型水質検査システムのための生体信号計測: メダカから計測した呼吸波の周波数成分の時間変化から水質の汚染を判別するシステムの構築に成功した[計測自動制御学会論文集].
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