(1) in vitroニッチの分子機構の解明:現在のGSC培養系では、in vitroニッチの構成要素として未知の因子の存在が想定された。そこで培養精原細胞の発現マイクロアレイ解析の結果をin silicoで解析し、培養条件改善に効果的と思われる分子を絞り込んだ。この分子の精巣における発現パターンを免疫染色、定量的RT-PCRを用いて確認を行っている。今後、これらの分子のGSC培養系への作用の分子メカニズムを検証してゆく。 (2) GSC培養条件の改良とin vitro精子形成系の開発:幹細胞維持に関わるゲノム修飾がどのようになっているか本年度は詳細に解析した。その結果DNAメチル化が精細胞分化過程に必須であることが過剰発現系と遺伝子破壊を用いた実験で明らかになった。今年度これらの結果をもとに具体的培養系改善のためDNAメチル化を制御する低分子化合物を培養系に添加し、その作用を検討する。またマウス精巣組織を器官培養することにより、減数分裂を完了し、半数体の精子細胞が産生できることを確認し、学術誌に発表した。 (3) GSCの機能アッセイ法の開発:GSCの培養において、単一細胞からの増殖は非常に困難であった。この課題に対して、我々はMicrodrop培養法を開発した。この方法により、ごく少数のGSCも増殖できることが確認でき、そこから増殖したGSCには幹細胞機能があることを精細管内への移植にて確認した。GSC培養系においては培養細胞中の真の幹細胞の比率が常に問題になるが、Microdrop培養法で、幹細胞アッセイも可能となり、GSCの培養条件の改良にも応用できるので、今後の発展に期待できる。 (4) ヒトを含む多種ほ乳類のGSCの性質の解明と培養法の開発:これまで、ヒト、ブタ、ラットのGSCの培養を試みてきた。現在、ラットのGSCは安定して培養できるようになったが、ヒト、ブタのGSCの培養法は完成していない。引き続き、培養法の改良を試みる。
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