研究領域 | 配偶子幹細胞制御機構 |
研究課題/領域番号 |
20116005
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小川 毅彦 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (50254222)
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研究分担者 |
大保 和之 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70250751)
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キーワード | 精子形成 / 精子幹細胞 / エピジェネティクス / 器官培養 / 培養 / ニッチ |
研究概要 |
哺乳類一般、特にヒトの精巣から精子幹細胞(GSC)の培養株を樹立するという目的のもとに、我々はマウスGSCの培養条件の改良を行っている。その方法の一つとして、マイクロドロップ培養法によるGSC培養をおこなった。マイクロドロップ培養法は、培養細胞中の幹細胞検定法としても利用できることから、培養条件の詳細な検討や改良にも有用であることがわかった。またGSCの内在性の制御機構を明らかにする目的で行った、維持メチル化を障害するNp95KOマウスの解析の結果、精子幹細胞は低メチル化で分化のスタートにDNAメチル化が必須であることが明らかとなり、GSC維持には、DNAメチル化阻害剤が有効であることが示唆された。 一方、哺乳類のin vitro精子形成系の開発が重要であり、それがGSCニッチの研究においても有用であるとの認識から、その開発に取り組んできた。精巣組織片をそのまま培養する器官培養法を採用し、様々条件検討の末、血清代替物が器官培養の精子形成において血清よりも有効であることを見出した。血清代替物を用いた培養で、精子形成が完遂し、精子が産生されることを見出した。さらにそれら精子や精子細胞をもちいて顕微授精を行ない、産仔を得た。さらに精巣組織は凍結可能で、解凍後に同様の器官培養で精子が産生できることも証明した。この器官培養系にGSCを注入移植して導入することにより、培養GSC由来の精子産生にも成功した。培養GSCから産生された精子細胞を用いて顕微授精を行い、産仔にも至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
精子形成をin vitroにおいて完全に再現することに成功したことは、世界初の成果である。さらに昨年度はその方法を応用して、培養下で増殖させたマウス精子幹細胞からin vitroで精子を造ることにも成功した。これらの成果は、目的の範囲ではあるが、期待以上の成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
マウス精子形成をin vitroで再現できる今回の成果は世界初であり、今後の発展が期待される。特に、ヒトを含むマウス以外の動物のin vitro精子形成系の開発が重要である。また、精子形成障害の病態解明や治療への発展のために、現在の培養法をさらに改良し、より効率のよい精子形成系にすることが必要であると考える。さらに、男性不妊症の治療に向けた提案として、精子形成障害モデル動物の精子形成をin vitroで治療する試みも興味深く、その可能性も追求してゆきたい。
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