研究実績の概要 |
23年度までに孵化仔魚の腹腔内へと移植すると、宿主の生殖腺へと移動し、そこに取り込まれ配偶子形成を再開するGSCの季節的変動を明らかにすることに成功した。また、これらのGSCはその増殖活性も一年間を通じて大きく変動することが明らかとなった。さらに、ニジマス生殖腺のEST解析を行い、50,000プローブを持つDNAマイクロアレイをすでに作成済みである。そこで、24年度はこれらの特徴の異なる細胞間でDNAマイクロアレイ解析を行うことで、移植能が高い細胞と低い細胞、すなわち幹細胞能が高い細胞と低い細胞において特異的に発現している遺伝子の同定を試みた。また、マウスで生殖幹細胞で発現していることが知られているいくつかのマーカー遺伝子の発現も合わせて解析した。 マイクロアレイ解析の結果、16149転写産物が両細胞集団間で有意に異なる発現レベルを示し、そのうち8350クローンが移植能が高い細胞集団で高発現していることが明らかとなった。また、マウスの生殖幹細胞マーカーであるGFRa1遺伝子は移植能が高い集団で有意に高い発現を示したが、nanos2はマウスとは逆に移植能が低い細胞集団で有意に高い発現量を示した。さらに、従来は精原幹細胞での発現が全く報告されていない、いくつかの遺伝子が、移植能の季節変化と同調して発現量が変動することを明らかにすることができた。これらの遺伝子群は生殖幹細胞をprospectiveに同定するためのマーカーとして有用であることが期待される。
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