本研究は、活性酸素を生成する酵素であるNADPHオキシダーゼ(Nox)ファミリーの活性化制御機構の時間的空間的な全体像を明らかするものである。平成20年度に私達は以下のような成果を得た。 (1) Nox2活性化に必要なタンパク質p47^<phox>分子内の新規なNox活性化領域を同定し、この領域はp47^<phox>が膜に移行した後の過程に重要な役割を果たすことを示した。 (2) Nox2活性化に必須のタンパク質p67^<phox>のN末側、SH3ドメインが、Nox2特異的に作用して活性酸素生成を増強する役割をもつことを明らかにした。また、p67^<phox>分子内に新規な活性化領域を同定し、この領域がNox2に直接結合して働くことを示した。 (3) Nox2は、やはり膜蛋白質であるp22^<phox>とヘテロダイマーを形成しているが、このヘテロダイマー形成に必要な領域を見出し、慢性肉芽腫症(Nox2システムの異常のため活性酸素が生成できず重篤な感染症を繰り返す遺伝的疾患)のうちのいくつかの症例は、Nox2のアミノ酸置換によってp22^<phox>との結合が失われた結果であることを示した。 (4) Nox2のC末細胞質領域にNADPH結合部位があることを実験的に示し、NADPHとの特異的な結合に必要なアミノ酸残基を同定した。その解析結果をもとに、Noxが新規な機構によりNADPHを認識していることを明らかにした。 (5) Nox1〜Nox3の活性化に、Rac1、Rac2、Rac3の3種のRacが働きうることを明らかにした。またいずれの場合においても、Racのinsert regionは活性化に関与しないことを示した。
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