研究概要 |
本研究は、活性酸素を生成する酵素であるNADPHオキシダーゼ(Nox)ファミリーの活性化制御機構の時間的空間的な全体像を明らかするものである。平成21年度に私達は以下のような成果を得た。 (1) Nox2活性化に必要なタンパク質p67^<phox>(TPRドメイン、N末側SH3ドメイン、PB1ドメイン、C末側SH3ドメインから成る)の全長型の低分解能の溶液構造をX線小角散乱法により決定し、p67^<phox>分子内ではドメイン間相互作用がなく「伸びた構造」をしていることを明らかにした。 (2) p67^<phox>が十分なNox2活性化能をもつためには、N末側SH3ドメインがTPRドメインのすぐC末端側にくることが必要なこと、PB1ドメインがTPRドメイン近くてはいけないこと等を示した。 (3) ヒト好中球の食作用時において、Nox2活性化に重要な膜リン脂質の動態を測定する方法を確立し、(i)ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸は、ファゴゾーム膜形成時に減少を始め閉じたファゴゾーム膜には存在しないこと、(ii)ホスファチジルイノシトール-3,4,5-トリスリン酸は、閉じたファゴゾーム膜にのみ集積すること、(iii)ジアシルグリセロールは、ファゴゾーム膜形成時に出現しファゴゾーム膜が閉じて暫くして消失すること、(iv)ホスファチジルセリンは、ファゴゾーム膜に常に存在すること等を明らかにした。 (4) ヒト好中球の食作用時において、低分子量G蛋白質であるRab7は活性化型で閉じたファゴゾーム膜に集積するが、Rab5の集積は起らないことを示した。 (5) 哺乳類培養細胞を用いて、種々のNox(特にNox2)を比較的大量に発現させる系を確立した。
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