本研究は、活性酸素を生成する酵素であるNADPHオキシダーゼ(Nox)ファミリーの活性化制御機構の時間的空間的な全体像を明らかするものである。 平成23年度は、「Noxの活性発現に必要なタンパク質p22^<phox>とNoxとの結合様式」の解析を行い、Noxは膜貫通領域の2カ所を用いてp22^<phox>と結合することを明らかにし、この領域のアミノ酸置換を用いた実験により、今まで説明がつかなかった慢性肉芽腫症(食細胞Nox系が欠損する遺伝病)の症例の一部が説明可能になった。これは炎症などの病態解明に重要な知見を与えると考えられる結果である。更に、「Noxの各領域の役割」についてNoxのキメラタンパク質を用いて解析し、「NoxのN末膜貫通領域がNox2型であるかNox4型であるかによって、primary productとして生成される活性酸素の種類が決定されること」を明らかにするとともに、「Nox活性化タンパク質(p47^<phox>やp67^<phox>等)による調節を受けるかあるいは恒常的に活性酸素を生成するか否かを決めているのはC末細胞質領域であること」を示した。また、Nox2、p67^<phox>、Racの3者複合体の大量精製系を確立し結晶化を行った。Noxは膜上で均一に存在するのではなく、例えば遊走中の好中球ではNox2はその前方でのみ活性化されるし、Nox1は上皮細胞のapical側の細胞膜にのみ発現している。この様に、Noxの活性化は細胞の極性形成と強くcoupleしている。この細胞極性形成に必要な進化的に保存されたタンパク質であるmInscとLGNの複合体の結晶構造を2.6Aの解像度で決定した。LGNは8つのTPRモチーフをもちこれらがsuperhelixを形成しているが、そのsuperhelixの内側の凹面に沿ってmInscが結合することが明らかとなった。
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