本研究は、活性酸素を生成する酵素であるNADPHオキシダーゼ(Nox)ファミリーの活性化制御機構の時間的空間的な全体像を明らかするものである。 平成25年度は、まず、Nox1活性化の分子機構について解析し、タンパク質キナーゼC(PKC)によりNoxo1(Nox1活性化に必須のタンパク質)のThr-341がリン酸化されるとNoxo1とNoxa1(これもNox1活性化に必須のタンパク質)の相互作用が増強されること、その結果Nox1による活性酸素生成が促進されることを示した。Nox2の活性化には、2つのスイッチ即ち「p47phox(Nox2活性化に必須のタンパク質)の構造変化」と「低分子量タンパク質RacのGTP結合型への変換」が同時にONになることが必要であることが知られていた。一方、細胞刺激時に膜リン脂質から遊離したアラキドン酸がNox2を活性化できることが知られているが、アラキドン酸が「p47phoxの構造変化」を誘導すること以外、その分子機構は不明であった。今年度私達は、アラキドン酸が「RacのGTP結合型への変換」を引き起こすことに加え、さらにRacとp67phox(もう1つのNox2活性化に必須のタンパク質)とNox2の3者複合体形成という第3のスイッチ(今回見出した新たなスイッチ)もONにすることでNox2を活性化することを明らかにした。また、p47phox内に存在するPXドメインは膜リン脂質結合能をもちp47phoxの膜移行に重要であるが、このPXドメインとリン脂質の相互作用の詳細を構造生物学的および生化学的な手法を用いて示した。Nox5の細胞膜表面への局在を決定している領域を同定し、この領域が他のNoxタンパク質の細胞内局在にも影響しうることを示した。さらに、Nox2の細胞膜表面への局在における膜タンパク質p22phoxの重要性を明らかにした。
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