研究領域 | 活性酸素のシグナル伝達機能 |
研究課題/領域番号 |
20117004
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
筒井 裕之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70264017)
|
研究分担者 |
絹川 真太郎 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (60399871)
石森 直樹 北海道大学, 北海道大学病院, 助教 (70399848)
畠山 鎮次 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70294973)
|
キーワード | ミトコンドリア / 酸化ストレス / 活性酸素 / 心血管病 / ストレス応答 |
研究概要 |
本研究は、心血管ストレス応答におけるミトコンドリア転写因子ファミリータンパクの発現を制御する分子基盤を解明するとともに、心血管病の形成・進展におけるミトコンドリア活性酸素シグナル制御の役割をあきらかにし、ミトコンドリア機能制御という新たなパラダイムに基づく心血管病の治療法の開発を目指すものである。 本年度は、従来からの研究成果をさらに進展させ、心血管系のストレス応答におけるミトコンドリア酸化ストレスの役割について検討した。 心筋梗塞後心不全モデルマウスでは、高脂肪食投与糖尿病モデルマウスと同様に、心筋のみならず骨格筋においてNAD(P)H oxidase由来スーパーオキサイドの産生が亢進し、ミトコンドリア電子伝達系複合体の酵素活性の低下、ミトコンドリア呼吸能の障害、すなわちミトコンドリア酸化ストレスが引き起こされることを見出した。重要なことに、ミトコンドリア酸化ストレスは、骨格筋機能を障害し、運動能力を低下させるばかりでなく、インスリンシグナルを傷害し、インスリン抵抗性を惹起した。すなわち、インスリン抵抗性・糖尿病は心不全の重要なリスクであるが、骨格筋ミトコンドリア酸化ストレスを介して、心不全自体がインスリン抵抗性を惹起し、さらに心不全を悪化させるという悪循環を形成していることを見出した。また、磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた骨格筋代謝の解析により、拡張型心筋症を基礎心疾患とする心不全患者においても、同様の悪循環が生じていることが示唆された。 したがって、インスリン抵抗性は心不全の重要な病態修飾因子であり、その基盤にはミトコンドリア活性酸素シグナルが密接に関与することが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在まで研究は順調に進展しており、ミトコンドリア活性酸素が、心血管系に対するストレス応答として幅広い病態の形成・進展に関与していることをあきらかにしてきた。実際に、本研究の研究成果は、学会・.論文等で既に多数公表しており高い評価を受けている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に基づき、ミトコンドリア活性酸素シグナル制御の分子基盤の解明を推進するが、さらに、それに基づく新たな心血管病の治療法の開発を目指した研究へと発展させる。特に、動脈硬化などの血管障害から心筋梗塞・心不全などの心筋障害を含む幅広い心血管疾患をターゲットとして研究を展開する。また、本領域内の主として基礎領域の研究者グループとも有機的に連携して共同研究に取り組んでいく。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はない。
|