ミトコンドリアの生体維持機能は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)によって動的に制御されている。近年、mtDNAの酸化損傷およびそれに起因する活性酸素の過剰産生が、ガン、糖尿病、神経変性疾患など種々の疾病の発症に関与することがあきらかにされ、『疾病発症の共通基盤としてのミトコンドリア機能不全』が注目されている。mtDNAおよびミトコンドリア機能を制御する「Key molecule」は、ミトコンドリア転写因子(mitochondrial transcription factor ; TFAM)やその上流に存在しミトコンドリア転写因子コアクチベーターであるPPAR-gamma coactivator-1(PGC-1)を含む『ミトコンドリア転写因子ファミリー』である。 本研究は、心血管ストレス応答におけるミトコンドリア転写因子ファミリータンパクの発現を制御する分子基盤を解明するとともに、心血管病の形成・進展におけるミトコンドリア活性酸素シグナル制御の役割をあきらかにし、ミトコンドリア転写因子の機能制御という新たなパラダイムに基づく心血管病の治療法の開発を目指すものである。
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