「活性酸素シグナル」の過程には、新規の二次シグナル分子が種々関与していると考えられている。高い確度で存在が予想される分子であっても、その物性や安定性が不明であれば、直接的検出、同定は容易でない。このような状況では、有機化学の貢献が大いに期待される。本計画研究課題では、ニトロ化ヌクレオシドに関する活性酸素シグナルに焦点をあてている。 まず、8-ニトロcAMPなどアデノシン誘導体の生体内存在の検証を目指して検討をおこなった。人工抗原として必要なニトロアデノシン誘導体を化学合成した。8-ニトログアノシン誘導体に適用した従来の合成法(8-Br体の直接ニトロ置換による合成)は、アデノシン誘導体では無効であった。そこで、新たに開発した合成法に従って、アジド体を経由し合成した。ニトログアノシン同様に、システイン残基との反応性が認められた。この性質を利用して、ニトロアデノシン誘導体の特異的ポリクローナル抗体の作製に成功した。 つづいて、ニトロcGMPの生理作用に関与する標的タンパク質を解明するための研究を行った。最初に、蛍光団を有する生物活性ニトログアノシンプローブを開発した。このプローブは、ダンシル基を含んでいる。プローブ自体の蛍光は弱いが、タンパク質のシステイン残基と反応すると電子状態が大きく変化するため、蛍光が増大するという優れた特性を有する事がわかった。開発した化学プローブの細胞内への取り込みと、細胞内小器官への局在を調べるため、本研究課題で購入した蛍光顕微鏡を用いてライブセルイメージング実験を行った。
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